NFTに取り組んでいる人にさまざまな角度からNFTの魅力をお伺いする本企画。

今回は「元素騎士ONLINE META WORLD」を運営するMetap社のCEO、Maxi Kuanさんにお話しを伺いました。

元素騎士ONLINE META WORLDは、2012年に台湾で「Game of the year 金賞」を受賞し累計800万ダウンロードを超えるビッグタイトルである「エレメンタルナイツ」をベースに開発されたブロックチェーンゲームです。

一方、Maxiさんご自身は2017年からブロックチェーン業界に参入し、その中で「ゲーム×ブロックチェーン」の組み合わせに可能性を感じたことが元素騎士ONLINE META WORLDの誕生につながりました。

今回のインタビューでは、ブロックチェーンゲームという1つのゲームジャンルが確立されつつある中、Maxiさんはどのような想いを持って元素騎士ONLINE META WORLDの開発を進められているか伺うことができました。

ぜひ最後までお読みください!

元素騎士オンライン CEO Maxi Kuanさん(マキシさん)

元素騎士オンライン CEO Maxiさん

※本記事ではブロックチェーンゲーム(BCG)、ゲームファイなどの言葉が出てきますが、いずれも「ブロックチェーン技術を活用し、NFTや暗号資産の経済圏を伴ったゲーム」を指しています。記事内では使い分けていますが、違いがよくわからない方はほぼ同一のものとして読み進めていただいて問題ありません。

元素騎士オンラインは世界に絶賛拡大中

出典:元素騎士ONLINE META WORLD ホワイトペーパー(以下出典省略)

−元素騎士ONLINE META WORLDの直近の状況についてお伺いします。

2021年12月からプロジェクトがスタートし、それから2種類のトークン(MV、ROND)の上場、ゲームの制作、このあたりが2022年の主たる活動でした。

ゲームバランスや経済圏の調整もまだ途中で、ここ数ヶ月はそのバランスを取りながら走っています。

私自身は主にコミュニティでの発信や各言語圏のエリア開拓などに携わっています。

最近は特に中国語圏のユーザー、そして東南アジア圏のユーザーの増加率が著しいですね。

今では日本ユーザーよりも他の地域のユーザーの方が多くなりましたが、バランスとしてはそれが理想だと考えています。

そもそもグローバル展開を考えており、イギリス、シンガポール、フィリピンなどを拠点に多くのゲームギルドやインフルエンサーの方が元素騎士ONLINE META WORLDのライブ配信をしてくださっています。

なにせアクシーインフィニティが盛り上がった地域ですからね。現地の方からは、「元素騎士は次のアクシーインフィニティだ」とお褒めをいただいたりもします。

だからといって今の時点で成功と言えるわけではありません。

私たちが目指しているのは「メタバースとしての経済圏」の構築です。

ただ、切り口としてはやはりみなさんが入りやすいゲームという形であることはとても大切です。

元素騎士ONLINE META WORLDはそのベースとなる「エレメンタルナイツ」という切り口からも、興味を持っていただくことができます。

2023年中にはメタバース内の土地NFTにあたるLANDのリリースもあり、今後はゲームだけではなく本格的なメタバースとしての展開をメイントピックにしています。

−日本以外のユーザーがかなり増えているんですね。その要因はどのようにお考えですか?

昨年はフィリピンでゲームファイに特化したイベントに出展させていただきました。

当時はFTXの件が起きた直後であるにも関わらず、現地の熱気がすごかったんですよね。

現地ユーザーからも元素騎士ONLINE META WORLDは非常に支持されていました。

もともとゲーム好きな国であること、また他のゲームファイはかなりシンプルなカードゲームやwebブラウザーゲームしかない中で、かなり本格的なゲームを出しているのは元素騎士ONLINE META WORLDくらいしかない、と。

現地のゲームギルドのプッシュもあり、そこで火がついたと考えています。

熱気あふれるフィリピンでのイベントの様子

フィリピン最大のテレビ局から取材も受けた

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「MMORPG×メタバース」の経済圏を作りたい

−なぜブロックチェーンゲーム(BCG)の形で元素騎士ONLINE META WORLDを始めようと思ったのでしょうか。

最初のきっかけは2017年、当時はビットコインが世界中でブームになっていた頃でした。

その時にエレメンタルナイツ開発チームの代表の方と知り合い、ブロックチェーンとゲームで何かできないかなという話がすでにあったんです。

しかし2018年後半から仮想通貨の価格は暴落し、投資してくれる方もいなかったので一旦見合わせました。

それから3年後の2021年、NFTブームやゲームファイの波が来て、アクシーインフィニティをはじめゲームファイも様々なものが登場しました。

そのタイミングで、当時考えていた計画の話がまた出てきたんですよね。

最初は「ゲームファイとして面白いものを作ろう」というところから始まりました。

当時のゲームファイは、ゲームとしていまひとつというクオリティのものしかありませんでした。

一方、元素騎士ONLINE META WORLDのベースであるエレメンタルナイツは、日本と台湾で実績のある本格RPGです。

そのRPGこそが、メタバースには一番向いているなという感覚もありました。

RPGはゲームの中にお金もありますし、アイテムや様々な装備もあります。

それがトークンやNFTになるわけですから、テーマとしては最高の素材だったんです。

その後、ゲーム会社さんと話し合って、歴史あるエレメンタルナイツの「web3バージョン」を作ろうじゃないかという話になり、2021年12月のプロジェクトスタートにつながりました。

−なるほど。ゲームファイが乱立した時の状況はどのように見られていたのでしょうか?

まずはゲームとして不満が残るクオリティのものが多かったことがひとつ。だからこそ「自分たちで作ってみよう」という気持ちにはなりましたね。

また、Play to Earnの仕組みだけでは結局ポンジスキーム的(※)な部分が残ってしまい、新規ユーザーにお金を入れてもらわない限り持続しないという状況も、あまりよろしくないなと感じました。

ですので、Play to Earnだけではない「メタバースのモデル」を作り、ちゃんと回っていく経済圏を作らないといけないな、と。

※ポンジスキーム:後から参加する出資者から新たに集めたお金(の大半)を、以前からの出資者に向けて“配当金”などと偽って渡すことで、あたかも資金運用によって利益が生まれその利益を出資者に配当しているかのように装う詐欺のこと

−BCGとしてスタートを切るにあたり、大事にされていたことはありますか?

アクシーインフィニティなど、いわゆる先輩たちが今まで歩いてきた道を見ても、やはりゲームをテーマとしたメタバースが一番ハードルも低く、みんなが入りやすいなと思います。

web3を浸透させるためにはまさに最高のテーマだなと思いますが、その反面、NFTを持っていないとそもそもゲームプレイができないといったハードルはやはり無くしたいなという思いもありました。

その点、元素騎士ONLINE META WORLDは「Free to Play」で、メールアドレスかSNSのアカウントのどちらかさえあればプレイできます。

最終的にはメタバースとして、The SandboxやMeta社が目指そうとしていた世界をゲームという形で作っていきたいと考えています。

遊ぶだけならフリーですが、そのあとの攻略にはNFTが必要だとか、パーティーを組んで工夫を凝らしてモンスターを倒すといったゲーム要素はしっかりと作っていきます。

一方で、メタバースの土地にあたるLANDも元素騎士公式やCoincheckさんで販売しました。

こちらの展開はFree to Joinで、今年中にはハウジング機能のリリースなど、メタバース空間にいろんなオブジェクトを作っていけるようにします。

そこでは元素騎士ONLINE META WORLDのNFTでなくとも、ブロックチェーンに乗っているNFTであれば飾ったり販売したりできる状態を目指しています。

LANDの公開までは、ハウジング機能のツールである「LAND Editor」というオブジェクトなどを自由に設置できるツールの体験版なども先行で公開していきます。

また、LAND Editorとして「遊び」の企画やイベントも進めているところなので、LANDオープンまでの間もメタバースを楽しめるようなコンテンツを提供していきます。

−LANDの活用はUGC(ユーザーの手で作成されるコンテンツ)で進むイメージですか?

そうですね。LAND開発は完全にユーザーさん側の動きになり、公式のLANDはそもそもないです。

私もいちユーザーとしてLANDを持っているだけであり、みなさんがLANDに何をどう作るかは私も運営も触れることはできません。ユーザーのみなさんの創意工夫次第です。

素材やオブジェクトはこちらが用意しますが、特定の条件を満たしているユーザーさんはUGC機能が利用できるので、自分のオリジナルNFTを作ったりしてLANDを開発いただけます。

完全にオリジナルのゲームを、自分のLANDで作ったりもできるようになりますよ。

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ブロックチェーンゲームであるがゆえにぶち当たる困難

−ゲームづくりの中で難しかった課題やぶち当たった困難はありますか?

いくつかあります。

まず、web3業界でよくあるのが「これって昔の古いゲームをただオンチェーンにしただけでしょ?」と言われることですね。

ですが、実際はそんなことはありません。

元素騎士ONLINE META WORLDも、元のエレメンタルナイツに比べるとグラフィックも全面的にアップグレードし、さらにトークンやNFTが絡んでいるわけですから。

今までのインターフェースでは成り立たなくなってくるので、そのあたりの再設計は開発チームと担当プロデューサーが一生懸命考えてやっていますが、これはなかなか大変なことですよね。

また、日本での展開にも困難がありました。昨年騒がれたリリースの延期の件ですね。

昨年の8月、仮想通貨を取り扱う際の法律面や日本での大々的な活動などを考慮した設計変更もあり、かなり工数がかかってしまいました。

あとは、ゲーム開発面での技術的なネックもあります。

今は完全にオンチェーン(ブロックチェーン上に記録)ではなく、一部はゲームサーバーで処理をしています。

すべてオンチェーンにすると処理も遅くなり、ゲームとしての体験が悪くなってしまうので、そこは考慮してハイブリッドにしています。

ですが、この点は今後dApps化(ブロックチェーン上におけるアプリ)し、完全オンチェーン処理を実現したいですね。

環境的にも昨年はFTXやTerra-USTの件もあり、相当な逆風が吹く中、「本当に運営の体力はもつのか」といった声もあります。

ですが私たちは、運営・開発とコミュニティのみなさんが協力して進めることができています。

困難はありますが、長い目での発展はまだまだこれからですね。

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「BCGと言えば元素騎士!」と言われるために

−元素騎士ONLINE META WORLDは今後、長期目線ではどのような成長を思い描いていますか?

まずゲームとしては、世界でも代表的なBCGとしてアクシーインフィニティを超えるくらいの規模感で広めたいと思っています。

これを成し遂げるには、日本、中国語圏、英語圏、東南アジア圏、それぞれでの戦い方があると考えてます。

例えば、元素騎士ONLINE META WORLDの世界観は日本風のテイストで、かわいい系のキャラクターで成り立っていますが、それ自体は好き嫌いがあるわけです。

もっと広めていくには、ゲーム内の様々なコンテンツにおいて、IPとのコラボなどが大事になってきます。

ファイナルファンタジーのビッグアーティスト・天野喜孝先生とのコラボなどがそれです。

今後は日本の有名なアニメや漫画などのIPとゲーム内アイテムでコラボをしたり、さらにはメタバースでのコラボなど、各IPコンテンツの力を借りて海外に広めたいと思います。

ゲームとしてちゃんとプレイができ、プレイによって多少はトークンがもらえて、何より誰でも気軽に楽しめるコンテンツ、こういった作品を目指したいですね。

ポンジスキームからの脱却は最大の課題

−BCG開発において最も大切にしていることは何でしょうか?

ポンジスキームをいかに脱却するか、その設計と努力が一番重要です。

STEPNも今は経済圏のバランスを取ろうと努力されていますが、昨年はポンジ的な部分が話題になりました。

そして我々も同じような課題に直面しています。

例えば、ゲーム内の難易度調整。これがトークンの価格に直結するわけですから、そこは大事にしているところですね。

BCGを作る上では、「ポンジにならない設計=トークノミクスの設計」、これをできる限り考えて、様子を見ながら随時バランス調整をしていくことが大切です。

また、ブロックチェーンであるがゆえの特徴として、自分たちだけで完結しようとするとダメなんですよね。

元素騎士ONLINE META WORLDはPolygonチェーンを使っているので、PolygonさんやQuickSwapさん(Polygonチェーン上の分散型取引所)と連携を取ることは重要です。

これは冗談ですが、もし仮にファイナルファンタジーやドラゴンクエストがオンチェーンのゲームになったら、例えばファイナルファンタジーの有名な装備である「源氏の小手」が元素騎士ONLINE META WORLDの中でも使えるというような可能性はあるわけです。

そういった連携を取りながら作っていかないとweb3サービスとしてはうまくいきません。

何かと注目を浴びがちなPlay to Earnの要素「以外の部分」を大切にしたいですね。

−自分たちのサービス単体ではなく、外部のサービスと連携して持続性を模索していくところは非常に興味深いです。

Play to Earnの問題点として、「そのお金はどこから出てくるんだ」という事はちゃんと考えなければいけません。

ゲームをプレイしているだけで本当にお金は生まれるのか、と。

運営からお金を出してまで「どうぞプレイしてください」というだけでは経済は崩壊します。

メタバースに注力するのはもちろん、企業向けの広告やeコマース、キャッシュフローのスキームを構築して、持続的なビジネスモデルにしていくことが大切です。

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BCGというジャンルが確立される中で元素騎士が目指すもの

−今後、日本や世界でBCGが広がっていくには何が必要だとお考えですか?

日本のゲーム会社大手であるスクウェア・エニックスが、今後はブロックチェーンゲームに力を入れていくと明言しています。

世界のリーダーである会社がそこまで言っているということは、今後間違いなく業界の中に「BCGというジャンル」が確立されることは目に見えています。

それも踏まえて、元素騎士ONLINE META WORLDがまず目指すのは「正しく価値を提供する」ことです。

Play to Earnに終始するだけのコンテンツでは通用しないことはハッキリしました。

これからはエンタメ要素のあるゲームであることは当たり前とし、これに加えてアセットとしてNFTがもらえるといった要素が大事になってきます。

自分が数千時間に渡り一生懸命プレイしたゲームで得たアイテム。それがすべてNFTとして残り、もちろんトークンも残る。これがまず最初に目指すべき「価値の提供」だと考えます。

また、先ほども少し述べましたが、他のプラットフォームとの連携の強化は必須です。

日本ではゲーム特化型ブロックチェーンのOasysさんがありますし、海外ではPolygonさんが「ゲームファイにおける、世界のパブリックブロックチェーンになる」と言っています。

チェーンであったり取引所であったり、あるいはweb2企業も含めてのエコシステムの形成は今後3〜5年でかなり整うと思います。

最終的にはBCGというジャンルが確実に多くのプレイヤーに認知されていくはずなので、その段階ではコンテンツIPプロバイダーさんと一緒に動いていきます。

あとは、今後はセミナーも実施していきます。

私自身も今年は日本で3回登壇し、BCGやメタバースのことを伝えていくつもりです。

BCG開発者として我々も頑張りますし、環境的にも多様なサービスがこれから出てくるので、2,3年後にはBCGが当たり前の世の中になっていると思います。

−最後に、元素騎士ONLINE META WORLDをプレイされている読者の方にメッセージをお願いします!

まずは、いつもプレイしてくださってありがとうございます!

BCGという新しい領域でのトライですので、ゲームの難易度調整などで一時期ご迷惑をおかけしたこともあるかと思います。

これについては運営・開発として奮起するとともに、コミュニティの声も常に聞きながら理想的なBCGを作っていきます。

私自身ももちろんプレイしていますが、正直難しいなと感じたり、普通に死んだりすることもありますので(笑)

いちユーザーとしてみなさんと一緒にプレイしながら、これからいろんなIPやコンテンツとのコラボ、あるいはみなさんに楽しんでいただけるキャンペーンも出していきたいと思いますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

−Maxiさんご自身もプレイしているということは、読者の方もいつかゲームの中でMaxiさんに会えるかもしれないということですね!

実際、割と話しかけられることはありますね。

新マップにみんなで出向いて、見事に全員死んじゃったりとか。敵が強すぎるんですよね……。自分で言うのもあれなんですけど(笑)

難しいからといって難易度を下げて簡単にすればいいのかというと、そうではないですからね。

パーティーメンバーと戦略をちゃんと考えるなど、攻略法を自ら練ってもらうのがMMORPGの醍醐味ですから。

こういったところはみなさんと一緒に私も楽しんでいきたいと思います。