NFTに取り組んでいる人にさまざまな角度からNFTの魅力をお伺いする本企画。
今回は、メタバースの学校である「ニンジャ寺子屋」で校長先生を務めている さちこバナナさん にお話しを伺いました。
「みんなで作る、みんなの学校」、そんな場所を思い描いたさちこバナナさんが、国内最大級のNFTコミュニティであるNinja DAOにて「メタバースの学校を作らせてほしい!」と提案したことからニンジャ寺子屋はスタートしました。
お金のためではなく、あくまでニンジャ寺子屋に通ってくれる子供たちのための活動を続けたいという想いゆえに、資金面などでは困難に直面し続けたプロジェクトでもあります。
多くの方が寄付の形でニンジャ寺子屋を支援する中、2022年12月25日、クリスマスの日にNFTアーティストであるみかみさんが本プロジェクト応援のためのNFTコレクション「CryptoNinjaChildren(CNC)」をリリースすることも話題を呼んでいます。
数あるweb3テクノロジーの中でも実用化までの道のりが険しいとも言われるメタバース。
その中で、すでに子供たちが実際に学んでいるニンジャ寺子屋の今についてお話しを伺いました。
ぜひ最後までお読みください!
「みんなで作る、みんなの学校」をメタバースで実現する
出典:ニンジャ寺子屋
−現在の活動内容についてお伺いします。
約1年前に「ニンジャ寺子屋」というメタバースの学校を立ち上げ、校長先生をしています。
私自身、教員歴は10年になりますが、子供が生まれてからは「あの仕事環境に戻ることはハードワークになるだろうな」と思っていました。
自分の生き方としても何かできないかと探していた時にイケハヤさんのVoicyで「メタバースの学校があったらおもしろいよね」という話を聞き、「やっと出会えた!これだ!」と感じました。
そこでDiscordのコミュニティに入り、「メタバースの学校、作らせてください!」と自分の想いを伝えたんです。
するとすぐにチャンネルが立ち上がり、あっという間に人が集まりました。
最初のうちは本当に手探りでしたが、目指すところは明確にあったので、今はそれが少しずつ形になっています。
−その学校が目指すものは何ですか?
目指しているのは「みんなで作る、みんなの学校」です。
最初から、本当に誰もが入って来れる場所をイメージして、この学校づくりはスタートしています。
特に必要な資格などもありません。リアルの世界で言うなら、近所のおじちゃんやおばちゃんのように、本当に身近にいる人まで含めてみんなで学校を作っています。
何らかの理由で学校に行けない子たちも、ベッドでの生活を余儀なくされている子たちも、いろんな子たちが学ぶことができます。
また、あえて「フリースクール」とは言っていません。
フリースクール=学校に行けない子供たちが集まる場所になりますが、それだとメタバースの学校が「学校に行けない子たちだけの集まり」になってしまいます。
そのように限定された学校にしたくなかったので、ニンジャ寺子屋は本当に誰もが学べる場であると位置付けました。
学校に行っている子も、行けない子も、学びたいと思った子たちみんなが来れる学校にしたかった。
メタバース上では、いわゆる障害や学校へ行っていない理由なんて関係ないわけですから、そこでみんなが一緒に学び合ってほしいなと。
子供たちのサードプレイスのような場所になればいいなと思って作っています。そして今、その姿にかなり近づいてきています。
関連記事:イケハヤさんってどんな人? 3000万のCryptoPunksを買い、CryptoNinjya NFTで新しい関係性を探求
勉強嫌いの自分にも「メタバースで実現できること」は想像できた
メタバースでの授業の様子 出典:ニンジャ寺子屋
−さちこバナナさんご自身は、なぜメタバースを使って学校を作ろうと思ったのでしょうか?
意外に思われるかもしれませんが、私自身は学ぶことが大っきらいなんですよ(笑)
たとえば仕事で研修を受ける時なんかは、どうやったら研修から逃れられるかしか考えていないような、そんな人間です。いわゆる学校の勉強は嫌いなタイプなんです。
ではなぜ、学ぶことが嫌いな自分がイケハヤさんのVoicyを聴き始めたのかという話になるんですが、「このままじゃダメだ。学校の先生を続けても消耗していくだけだ」と思ったんですよね。
子育てと仕事ばかりの生活で、お金は貯まっていくかもしれないけど、それだけだなと感じました。
しかも教員生活は、20年後の姿もはっきり見えてしまう。そのことが、なんだかすごくつまらないなと思って。
だから、自分が心からやりたいと思えることを探していたんです。自分はやりたいと思ったことや好きなことには、夢中で突っ込んで行くタイプなので。
−なるほど。このままじゃダメだと思って何かを探していたんですね。イケハヤさんと言えばメタバースの前にまずNFTだと思いますが、NFTには興味は持たなかったのでしょうか?
最初の頃は難しそうだなという印象だけで、興味はあまりなかったですね。
でも、イケハヤさんがしょっちゅう「僕のVoicyを聴いているみなさん、そろそろNFT買いました?」って言ってくるじゃないですか(笑)
ですので、流石にNFTは触りましたけど、それでもNFT自体には興味はなかったですね。
ただ、NFTという技術には可能性はあるなと感じました。これは手段になるな、と。「NFTをやりたい」ではなく、「NFTは何かに使える」と思い、そこから触り始めましたね。
−NFTはあくまでツールだと捉えたんですね。一方、メタバースはチャンスだと思えたのはなぜでしょうか?むしろメタバースの方が、技術面から見ても扱いは難しそうな気がします。
たぶん、頭の中でイメージしやすかったんだと思います。
私自身、勉強しないタイプの人間なので、NFTはぶっちゃけよくわからないし、コピーができないデジタルデータとか言われても「いや、コピーできてるじゃん」って思いましたし。
でもメタバースは「新しい世界をそこに作れるんだ」「これを使えば、学校も作れるんだ」という想像ができました。
「リアルの世界の学校は作れないけど、メタバースだったら作れるじゃん」という、ただそれだけの発想でしたね。
過去行われた授業 出典:さちこバナナさんnote
ニンジャ寺子屋に関わってくれた人にNFTの証明書を
−ニンジャ寺子屋の活動の中で、NFTはどのように活用されていますか?
これはまだ構想段階ですが、大きく2つあります。1つは「証明書」、もう1つは「お金集めの手段」です。
証明書については、寺子屋生であることの証明書、つまり「学生証」のようなものを発行するイメージです。
ニンジャ寺子屋としても実績を作った上で、子供たちが寺子屋の中でワークしたり発表したりしたという事実を、みんなで認め合って学生証を発行する。
その学生証を持っていれば、その子はニンジャ寺子屋で学んできた人なんだということが誰の目にもわかる。
「この人は2022年の段階からすでにweb3を触っていたんだ」ということがわかる証明書にしたいなと考えています。
これはニンジャ寺子屋に寄付をしてくださった方についても同様です。
ニンジャ寺子屋ではまもなく冬休みスペシャルというイベントを行うのですが、それに向けて寄付を集めました。
そこで寄付をしてくれた方たちにも、寄付をしてくれてありがとうという意味を込めつつ、同時に2022年の段階からニンジャ寺子屋に寄付をしてくれたという証明になるようなものを作りたいと思っています。
いずれニンジャ寺子屋が大きくなったときには、その証明書を持っていることで「あの時からニンジャ寺子屋を応援してくれていた人たち」という証明になればいいなと。
そもそも、ニンジャ寺子屋は将来値上がり益を得られるようなNFTを出す計画は全くないんですよね。
それなのに、いまニンジャ寺子屋に集まっている人たちが大勢いる。これって、純粋な応援の気持ち以外の何物でもないんですよ。
だからこそ、「あの時から応援してくれたメンバーです、ありがとう」ということをちゃんと証明してあげられるようにしたいと思っていて、そこにNFTを活用したいと考えています。
−証明書としてNFTを活用するのは理にかなっていますね。この証明書NFTですが、卒業証書のような意味合いのものでしょうか、それとも学生証のように在籍している時点で子供たちが手にするものなのでしょうか。
そこはまだ決まっていませんが、すでに寺子屋生として活動している子は何人もいますので、その子たちにはちゃんと寺子屋生であることの証拠は渡したいですよね。
ですが、ただ来てくれたというだけで寺子屋生であるとするのではなく、寺子屋でちゃんとワークしてくれた人をみんなで認め合う文化を作っていきたいとは思っています。
一方で、最近私たちの中でも話題になっていることとして、「ワークしないと寺子屋生になれないのか、寺子屋メンバーになれないのか」という議論もあります。
みんなの居場所であってほしいのに、「何かしないと寺子屋生になれないのか、自分が何者かにならないと寺子屋生として認められないのか、寺子屋ファミリーになれないのか」という話になってしまう。
そうすると、本人の中では「わたしは何もできていない、だから寺子屋生とは認めてもらえない」と考えてしまう人も出てきます。
するとその人たちは、せっかく来てくれたのにいなかったことになってしまう。それは避けたいんです。
だから、周りのみんながその人のことを必要だと思えたり、いてくれてありがとうと思えたりしたならば、その人には証明書を渡すという形でいいんじゃないかなと考えています。
ニンジャ寺子屋は、たとえば障害がある子でも来てほしいと思っています。
重度の心身障害を抱えていて、おはようという言葉がやっと言えるという子であっても、例えばその子がメタバースにいつも同じ時間にきて「おはよう」と言えば、周りのみんなはそれだけで朝が来たなという気持ちになれる。
その子がいてくれただけでうれしくなる、そんな風にみんなが感じることができたなら、もうそれはその子の役割だと思うんです。
その子がいる意味、寺子屋にとって必要な人だということ、それがみんなに認められることが大事なんです。
そしてそれが1回きりではなく、毎日毎日続けていたとしたら、もうそれはその子の役割です。お互いがお互いを認め合える関係を作っていきたいと思います。
CNCはみかみさんの「あしながおじさん活動」
出典:みかみさんのTwitter
NFTのもう1つの活用方法は、お金集めの手段です。
私が個人で作っている「てりやきバナナ」というNFTコレクションがあり、これもニンジャ寺子屋を応援する意味合いのNFTではあるんですが、ニンジャ寺子屋からは値上がりを期待するような類のNFTは出していません。
これには理由があります。
ニンジャ寺子屋からこのようなNFTを出してしまうと、やはりそこには人間の感情が関わってくるので、値段が下がれば応援したくなくなったり、寺子屋に対して「なんとかしろよ」という声もきっと出てくると思います。
そうすると寺子屋としても、NFTの価値を高めるためのことをしなければならなくなります。
子供たちには「好きなことをやっていいよ、学びたいことを学ぼうね」と言っていますが、先程のような周囲からの声を受けて、子供たちにもこちらが意図することをさせる学校になってしまいかねません。
いつしか子供たちのための学校ではなく、「NFTの価値を高めるための学校」になってしまいます。
それは絶対に避けたいから、今はNFTを出さず、純粋にニンジャ寺子屋を応援する人たちで学校を作っています。
−CryptoNinjaChildren(CNC)はニンジャ寺子屋のNFTではないのですか?
勘違いされている方もいるかもしれませんが、CNCとニンジャ寺子屋はまったくの別物なんですよ。
Ninja DAOというつながりはあるものの、あくまで売り上げの一部を寄付頂くという関係です。
CNCファウンダーのみかみさんとはたくさんお話ししてお互いに信頼関係を築けていますが、あくまでニンジャ寺子屋とは別物。
だから、みかみさんが5年後にどういう活動をしているかわからないし、5年後も一緒に活動しているかはわかりません。
でも今みかみさんは、「3年間ニンジャ寺子屋を応援します」と言ってくれています。だから私たちも、寄付をいただいたお返しにCNCを一緒に盛り上げて、価値を高めるための努力をしていきます。
出典:CNC公式
−なるほど。あくまでCNCはみかみさんのプロジェクト、そしてニンジャ寺子屋を応援する立場として、CNCを販売してお金ができたらそれを寺子屋に寄付してくださるということなんですね。
あくまで私は私で自分の城を作る。みかみさんはみかみさんで、男気でお金は出すけど口は出さないぜ、という感じの関係になっています。
今後、ニンジャ寺子屋を応援したいと言ってくださる方には、ニンジャ寺子屋自体が価値を高めて中身を充実させることで、ニンジャ寺子屋を応援してくださった方が発売したNFTの価値も上がっていけばいいなと思っています。
−NFTの売上といえば、初期販売だけではなく2次流通の手数料がありますよね。この扱いはどうなるのでしょうか?
CNCについては、みかみさんのコレクションなので2次流通の手数料ももちろんみかみさんに入ります。
2次流通で発生した収益も含め、みかみさんの財布に入っている資金の使いみちはあくまでみかみさんが判断します。
きっとゆくゆくはみかみさんも、ニンジャ寺子屋が完全に自立できるようになったことを見届けたら、次は違うところを応援するためにお金を寄付することもあるでしょうね。
これってつまり、みかみさんの「あしながおじさん活動」なんですよ。
ニンジャ寺子屋としても独自でNFT出せよとみなさん思われるかもしれませんが、そこは出せないんだというところは理解いただければと思います。
福祉や教育の領域に株式会社が入って来れないのも、そういう部分が大きいですよね。
お金儲けに走ると、本当に困っている人たちのための活動ができなくなるんです。
関連記事:12月後半は絶対見逃せないNFTの発売が目白押し! 注目の3つを紹介「KAGURA、CryptoNinja Children(CNC)、Live Like A Cat(LLAC)」
1万5千円のNFTが持つ「意味」を買ってくれた人への信頼感
−ニンジャ寺子屋においてもNFTが積極的に活用されていくイメージが見えてきました。NFTをご自身の活動に用いてよかったと思えることはありますか?
いろんな人と交流ができたことですね。
例えば、ニンジャ寺子屋に寄付してくださった人たちがどんな人なのかなと考えたとき、その人のウォレットの中を見ると、本当に身銭を切って他人を応援してくれていることがわかります。
私の配信(VoicyやStandFM、twitterのスペース)を聞いたというだけで応援のために1万5千円(バナナさんが個人で展開するNFT、てりやきバナナの販売価格)を払えちゃうんだ、と。
それだけでその人のことを信頼できますよね。
価格が下がる可能性、ゼロになってしまう可能性もある中で、この人は1万5千円をニンジャ寺子屋の可能性にかけられる余力と懐の広さを持った人なんだなということが、ウォレットを通じて透けて見えます。
NFTをたくさん買っているからお金持ちだとかいうことではなく、信頼ができるのでその後も安心して関わることができるという感じですね。
高級な1万5千円のお茶を買えば、それだけの価値を持ったお茶を手にすることができます。でも、1万5千円のNFTを買っても、何かの役に立つわけではありません。
役には立たないんだけど、でも意味はある。その「意味を買える」こと、意味があることを理解してくれていることも含めて、信頼できる証だと受け止めています。
NFTはニンジャ寺子屋の可能性を広げるアイテム
−最後に、NFTというものを知り、それに関わったことで人生変わったなと思うことをお聞かせください。
NFTを武器として使うことで、可能性は確実に広がりました。
NFTを使うことで面白い学校づくりができたり、人とより深い関わりが出来たりする可能性が広がったなと思います。
ニンジャ寺子屋としてはNFTを発行してお金を調達しているわけでもないのに、それでも使える武器として存在しているのも面白いところですよね。
でも、そんな学校で校長としてやっていて、その中ではNFTにガッツリと関われる学校を作っているというのは、なかなか面白い学校作りができているなと思いますね。
さちこバナナさん関連リンク
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