
NFTに取り組んでいる人にさまざまな角度からNFTの魅力をお伺いする本企画。
今回は香川県でうどん店を営みながらNFTに取り組んでいる うどん1号さん にお話しを伺いました。
うどん1号さんの本業は「純手打うどん よしや」の店主。TV番組「情熱大陸」にも出演された有名店です。
そんなうどん1号さんですが、ジェネラティブNFTコレクション「Nounish CNP」のファウンダーをはじめ、数多くのNFT関連の取り組みに関わっています。
「飲食店×NFT」という前例がない組み合わせに可能性を見出してNFTを始めたうどん1号さんですが、今では飲食店の枠組みを超え、多様な形で日本のNFT市場を引っ張る存在になっています。
今回のインタビューでは「なぜうどん店の店主がNFTを始め、どこを目指して活動しているのか」という非常に興味深いお話しを伺うことができました。
ぜひ最後までお読みください!
「飲食店×NFT」の第一人者になる!

−NFTを知ったきっかけについてお伺いします。
私の本業はうどん屋ですが、コロナが流行りだした頃にお店が暇になったことがきっかけですね。
当時はみんな外出が出来ずお客さんも来なかったので、空いた時間で勉強をして新しい知識を取り入れたりしていました。
中田敦彦さんや西野亮廣さんのオンラインサロンなどに入り、今までに知らなかったことを学んでいきました。
そんな中、2021年の年末頃に同じく西野さんのサロンに入っている大阪のうどん屋の仲間がDAO(自律分散型組織)というものを教えてくれたんです。
トップダウンではなく、メンバーが自律的に活動していく新しい組織形態。このDAOについてさらに調べていくと、NFTを用いて様々な取り組みをしている人たちに出会ったんですよね。
「だったらNFTもやってみるか」と思い、NFTもそのうどん屋の彼に話を聞いて始めることにしました。
−DAOにせよNFTにせよ、興味を持ったところで「自分には関係ない」「難しくてよくわからない」と言って行動にまで移さない人の方が多いと思います。うどん1号さんがこういった新しいテクノロジーを受け入れ、ご自身も行動を起こしていけた理由は?
NFTはweb3のテクノロジーですが、これまでweb1、web2と順に来ているわけですから、web3の波も遅かれ早かれ必ず来るんだろうなと思いました。
また、新規参入者もほとんどいませんでしたからね。
特に「飲食店×NFT」という切り口の人は全然いなかったので、今のうちに波に乗っておけば数年後には第一人者になれるんじゃないかなと。
その波は本物だなと思い始めたのはCNPが登場した時です。
自分が買ったCNPがめちゃくちゃ高い値段になり、「なるほど、こういうことが本当に起こるのか」と、web3の可能性をそこで確信しました。
関連記事:【CNP Toys】LINE×NFT!CNP関連プロジェクトがリリース! 第1弾は4分で完売、10倍に値上がり。第2弾は2月22日(水)に第1弾の倍の数をリリース予定。
現在のNFT関連の取組みはぶっちゃけ「何が起こるかな?」という実験

出典:OpenSea
−NFTに関する現在の活動内容を教えてください。
主なところはジェネラティブNFTコレクション「Nounish CNP」のファウンダー、あとは「日本NFT情報局」のメンバーでもあります。この2つが活動の大きな軸ですね。
今のうちから始めておけば確かに先行者優位は取れると思いますが、そこまで深く考えているわけではないです。単純に興味があって始めたという感じですね。
例えば日本NFT情報局などは、「NFTの情報を商品として販売することでお金を稼いでいる」という取り組みがなかったので、うまくいったら独占できるんじゃないかなと思ってスタートしました。
−ご自身がファウンダーを務める「Nounish CNP」はどのような経緯で始まったのですか?
元々は「ご当地Nouns」というジェネラティブNFTを作っていたんですよ。
誰しもが自分にとっての「ご当地」があるので、自分と関わりがあるご当地のNFTならみんな欲しがるんじゃないかなと。
自分の出身地、住んだことがある土地、親の出身地など、自分にゆかりのある都道府県って5つ6つくらいはあるじゃないですか。
なので、1人のNFTコレクターが複数個のご当地Nounsを買ってくれるんじゃないかなという狙いがありました。
また、ご当地という要素をもたせた場合、「誰かのハズレが別の誰かのアタリになる」と思ったんですよね。
NFTコレクションでは、レア度が低い個体などがハズレのように扱われることがあったりしますが、ご当地のNFTであれば必ず誰かにとってアタリになるわけですから。
そういった狙いを持った上で、「Nouns DAO Japan」というDAOで制作していたんですが、Discordの参加者が少なかったんですよ。
そこで「CNPを絡めてDiscordの参加者を増やそう!」ということになり、CryptoNinja Partnersをもじった「CryptoNinjaパートナウンズ」というダジャレからNounish CNPが生まれました。
−途中でダジャレも挟んでいるあたり、とてもユニークな発想から生まれたプロジェクトですね。このNounish CNPですが、何を目的としたプロジェクトなのでしょうか?
ぶっちゃけ実験です。明確に何か目的を持って始めたわけでもないし、これからどうなるかもわからないですね。どこに向かって進むのか、その点も含めての実験だと思っています。
私の考えとして「飲食店×NFT」「観光×NFT」などの形で、NFTの活用により地域に対して何か良い変化をもたらせるのではないかということはずっと思っています。
例えば、私も関わっている「さぬQN!(さぬきゅん)」というNFTプロジェクト。
これは香川県のうどん屋さん23店舗+大阪のうどん屋さん1店舗の実名を出してやっているプロジェクトです。
CNPにはバー忍(保有しているNFTを消滅させる代わりに新たなNFTを取得する仕組み)がありますが、さぬQN!でもバー忍のような仕組みを取り入れることで、NFT画像の背景に香川県の自然風景や観光地を載せようとしています。
そして、NFTホルダーの方には実際にその場所に足を運んでもらい、設置してあるQRコードを読み取って来場記念SBT(転売不可能なデジタルトークン)を発行するといった取り組みを考えています。
こういった取り組みを進めるにあたり、私自身が地元の町長さんや行政の方、企業の社長さんと割と繋がりがあるので、お金を出してもらうなどして地域全体で動きを作っています。
このように、明確に「NFTで何かを変えよう!」と思っているわけではなく、「NFTを使ってこんな取り組みをしたらどうなるかな?」という実験をしている感じですね。
自分の住む地域や近しい人に何かしてあげたいという想いがまず根幹にあり、それを新しいテクノロジーでブーストしていけたらいいなと思っています。
関連記事:NounishCNPがトレンド入り! NFTバトンリレーに参加表明して得られたものとDAO活のすすめ
NFTが持つ投資・投機「以外」の側面を伝えたい

−NFTを活用することによる効果・成果があれば教えてください。
正直に言うと、まさにそこを模索している最中なんですよね。
近いうちに私から事業者さんに向けてNFTセミナーをする機会があるんですが、そういう人に伝えたいのは必ずしも「NFT=投資・投機」ではないということです。
これがあるとどうしても「NFTって触りにくい、怖い」というイメージにつながってしまいます。
そうじゃなくて、NFTはツールなんだと。たとえば、各事業者さんの会社や取り組み、コミュニティなどに対する帰属意識を芽生えさせるためのツールなどですよね。
そういう切り口で話をした方が通じやすいんじゃないかなと思っています。
要はスタンプラリーと同じ。デジタルのスタンプラリーと基本的には一緒ですよ、と。
これまでもデジタルのスタンプラリーはありましたが、取り組みが終わってしまえば後には何も残りませんでした。
ところがNFTを用いることで単なるスタンプラリーではなく、できることの幅を大きく広げることができます。
極端な話、事業者さんには「メタマスクというウォレットはPayPayのアプリのようなもので、そこにお客さんが買った商品がずっと残り続けるんです」みたいなイメージで理解してもらうのがいいんじゃないかなと思っています。
NFTはあくまで技術であり、売買だけを目的とした投資商品ではないので、こういった話をしてブロックチェーンの持つ可能性をいろんな切り口からお話しできたらいいですね。
−まさにブロックチェーンの本質的な部分ですね。事業者にはそういった伝え方をする方が、NFTを用いることのメリットを感じてもらえそうです。
とは言うものの、NFTを導入すれば万事解決というわけではありませんからね。
あくまで新しい選択肢の1つとしてNFTの利用を提案するくらいであって、これで一気に社会の問題が解決するとは思っていません。
ただ、可能性は限りなく広がるだろうということです。
別の例を挙げると、NFTを用いた新しい応援の形などですね。
クラウドファンディングは現代の代表的な応援の形ですが、金銭的な応援はNFTでも可能です。
そしてNFTを用いた場合、応援としてお金を差し出すとそれがNFTという商品になって返ってきて、しかもその値段が上がったりする。ここはぜひ理解してほしいなと思います。
スーパーチャットのような投げ銭機能は文字通り一方通行の投げ銭ですが、NFTを用いると投げ銭をしたはずお金がNFTという金銭的価値があるデジタル資産として返ってきます。
しかも、それを持っているだけで時には含み益が発生して、応援した側もいい思いをすることができるわけです。
まだいろんなことが実験の段階ですが、これまでの社会経済のシステムでは実現できなかったことがNFTのおかげで実現できるかもしれないという点は、事業者さんにはぜひ知ってほしいですね。
関連記事:【さぬQN!】うどんを食べてNFTを激安(約220円)でゲットする方法 情熱大陸出演の香川うどん店主「udon1GO」さんによる4つの「〇〇toミント」が斬新すぎる
香川県はNFT盛り上がってまっせ!
−NFT関係の方がうどん1号さんのお店を訪れることが多いと聞きましたが、うどん1号さんの身近なところでNFTの話をできる人はいるのでしょうか?
めっちゃいますよ!うちの店の店員、向かいの店の店長、NFTをやっているお客さんもたくさんいます。
会話の中で普通に「〇〇のプロジェクトのALっていつまでに申請すればいいんですか?」みたいな内容が飛び交っています(笑)
※AL:アローリスト。NFTを優先的に購入できる権利。
−まだまだNFT人口が少ない今の日本では、めちゃくちゃ珍しい光景だと思います(笑)
実は香川はNFTを触っている人が結構いるんですよね。
イケハヤさんの仮想通貨ラボに古くから入っている方がいて、その人たちがNFTの勉強会を開いたりとか、各々で仮想通貨やNFTを普及させている感じがあります。
特に私の場合は実名を出しているので、少なくとも私のところに来ればNFTの話ができると、みなさんそう思って集まってくるのかも知れませんね。
これは手前味噌ですが、うちのうどんが割と有名であることも影響していると思います。
NFT関係のコミュニケーションといえばTwitterやDiscordが中心で、生身の人間と話すことってないじゃないですか。
でも、普段そのようにテキストだけでやり取りをしている人が、NFTにも詳しく、しかも情熱大陸に出た有名なお店の店主となれば、みんな行きたくなると思うんですよ。
今はもう観光地みたいな感じになっていて、CNPホルダーさんにとっては聖地みたいな扱いまでしてもらっています(笑)
−CNPを持っている人は確かにお店に来てくれそうですね。実際にNFTを触っている人がお店に来られて、そこから何か広がりや新たな展開はありましたか?
やっぱり仲間意識が生まれますよね。
Discordでチャットをしていても「10人中8人は顔を知らないけど、残り2人はお店で直接会ったことがあって顔も知っている」となれば、関係性はやはり変わってきます。
そもそもNFTプロジェクトのファウンダーは、自分自身が投資対象だと思うんです。
自分が運営しているコレクションを買ってもらう、これはすなわち自分自身が投資対象として見られていることに他なりません。
私自身が投資対象になっているので「こいつにお金を出していいのだろうか?」という目線で常に見られていると思っています。
そう考えると、直接会うことで自分という人間をより深く知ってもらうこと、何か相手に伝わるものがあって「あの人、いい人だな」と思ってもらうことはすごく大事ですよね。
関連記事:【直撃インタビュー】web3上に農村を作る! tomajo NFTファウンダーがDAOの仲間と共に模索する「新しい農業の稼ぎ方」
NFTで食っていける人を増やしたい

出典:OpenSea
−NFTを活用して今後挑戦していきたいことはありますか?
「NFTの仕事」でどれだけお金が稼げるのか、ということに挑戦したいですね。
これは私が稼ぎたいということではなく、「NFTで生計を立てていける人が果たしてどれくらい増えるのか」ということへの挑戦です。
本業としてweb3の仕事で食べていける人がどれくらい出てくるのか。これは大きなテーマだと思います。
NFTで生計を立てられる人が増えれば、それはすなわちNFTが普及するということですから。
エンジニアさんなど一部を除いて、昨年はみんなほぼ無報酬で働いていました。
私もほぼ無報酬でしたし、NFTを報酬としてもらうことはありますが、それって売れないじゃないですか。運営サイドが売るわけにいかないですからね。
だから報酬でAL100枚あげますと言われても、ミントするために「逆にお金払わなあかんやんけ!」みたいなことばかりで(笑)
これは愚痴ではなくて、いろいろなNFTプロジェクトでこういったことを経験してきた結果、今のままじゃダメだなと。
ですので今年は、web3できちんと稼ぐ人を作りたいと思っています。
私が関わっている日本NFT情報局では、NFTに関する情報提供を受けられる権利を0.06ETHで販売しています。これは180日ごとの更新型です。
これまでのNFTプロジェクトの問題点は「買い切り」だったことです。
これだと継続収入がなくなるので、SBT(転売不可能なデジタルトークン)を用いて180日間で更新というシステムにしました。
半年が経ったらSBT購入者が自分の意思で継続するかどうかを決め、継続する場合は再度0.06ETHを支払っていただく。これで継続収入を得る仕組みを作っています。
NFTではなくSBTにしたのは、初心者の方に高値掴みをしてもらいたくないからです。
例えば先行者がたくさんNFTを買って、後から入ってきた初心者の方に高値で売るということをしてほしくなかったので、いっそのこと転売できないSBTにしました。
数量も無制限にしたので、「web2サービスの課金要素をSBTで実現する」という感じの形態に落ち着きました。
この取り組みが、web3で稼ぐ人を生み出す第一歩になればいいなと思っています。
これからNFTを始める人にとって「優しい世界」を作るために

−NFTという新しいテクノロジーによって、これから世の中がどんな風になったらいいと思いますか?
頑張った人がきちんと報われる世の中になってほしいですね。
ブロックチェーンの技術には取引履歴などを改ざんできない仕組みがあるので、様々なことが可視化され、ウソをつけない世界になったらいいなと思います。
ウソをつくことは確かによくないけど、そのウソがばれないならばどうしてもウソをついたり、楽な方に流れるのが人間という生き物です。
性善説じゃなくて、まずは性悪説に立つべき。その上で、システムで最初から制限されていてウソがつけず、悪いことはできないようになっている。というか、やったらすぐにバレる。
そういった世界ならば悪いことをする人はそもそも減るでしょうし、居心地もいいんじゃないかなと思います。
−ブロックチェーンで実現できるまったく新しい世界。早くこっちの世界に来る人が増えてほしいなと思いますが、そのためには何が必要だと考えていますか?
とにかく新規顧客の参入ですよね。NFTをやっている人が増える、シンプルにそこだと思います。
その部分はイケハヤさん、しゅうへいさん、鴨頭さん、西野さんのような強力なインフルエンサーの方がやってくれています。
彼らが呼び込んできたNFT初心者の方に対して私たちができること、それは「NFTの世界は優しい世界だよ」ということを打ち出すことなんじゃないかなと。
「NFT始めてみたけど、結局損したじゃん」という思いをしてほしくないので、SBTを用いて高値掴みしないようなシステムを考えたり、あるいは〇〇 toミントのようなわかりやすく楽しい企画を考えたり。
日本NFT情報局でも「これをやったらALが獲得できますよ!」といった情報の特集をしたりなど、初心者でもわかりやすいことを意識した取り組みを常に考えています
−せっかくNFTを買ってもいきなり値下がりして気持ちが萎えてしまい、その結果、NFTをやめてしまう人がいるのはもったいないですもんね。
そうなんですよ。ですので、私としては「テレビに出るようなうどん屋さんもNFTやってますよー!」という感じで信用してもらえたらいいなと。
実名かつ顔出しというプレイヤーは多くなく、その上テレビにも出ている有名な飲食店というこのポジションは、恐らく今のところ私くらいでしょうから。
その強みを生かして、新しくこの界隈に入ってきてくれた人に信用を売る。うどん1号という存在を介してこの界隈のことを信用してもらえたらいいですね。
店に来ていただければいつでもうどん打ってますから(笑)。安心してNFTの世界に入って来てねというポジションで居続けたいと思っています。