NFTに取り組んでいる人にさまざまな角度からNFTの可能性をお伺いする本企画。
今回は、シンガポールを拠点にグローバルでGameFiプラットフォーム事業「PlayMining」を展開するDigital Entertainment Asset Pte.Ltd. (以下、DEA社)の創業者であり、共同代表・経営者でもある山田耕三さんにお話しを伺いました。
山田さんはテレビ東京で15年間に渡って音楽・バラエティ番組のプロデューサーを務めた経歴を持ち、現在はPlayMiningのコンテンツ開発とNFT企画を手掛けています。
PlayMiningでは、職業をテーマにしたカードバトルゲーム「ジョブトライブス(JobTribes)」をはじめ、複数のPlay to Earn(P2E:ゲームで遊んで稼ぐという概念)ゲームがリリースされています。
今回のインタビューでは、ゲームという一種のエンターテインメントがweb3のテクノロジーと掛け合わさることで、既存のゲームの概念を超え、私たち人類にどのような体験価値をもたらすのかという壮大なお話しを伺うことができました。
ぜひ最後までお読みください!
関連記事:「ジョブトライブス(JobTribes)」ってなに? 内容や特徴、始め方や稼ぎ方、初心者~中上級者までの攻略方法を詳しく解説します。
DEAPcoinは「エンタメの熱量」を可視化する
出典:DEA公式Webサイト
−GameFiプラットフォーム「PlayMining」とはどのような事業でしょうか?
PlayMiningは2020年5月26日からゲームがサービスインしたNFTゲームのプラットフォームです。
これまでゲームをしてこなかった方々にもゲームの世界に入っていただくこと、そして、新しいユーザーや市場を切り開くゲームプラットフォームとなることを目指しています。
既存の大手ゲーム会社もNFTゲームへの参入を公表していますが、ある程度の棲み分けは想定しています。
具体的には、大手ゲーム会社は既存のゲームユーザーに楽しんでもらうためのコンテンツを作っていくのに対し、私たちはこれまでゲームを敬遠してきた人、ゲームに触れて来なかった人たちでも気軽に遊べるものを作っていくイメージです。
したがって、私たちが作るゲームは比較的カジュアルで、複雑なゲームリテラシーを必要としないものになっており、これはすでにPlayMiningに並んでいる5つのゲームにも共通する特徴になっています。
PlayMiningのもう1つの特徴は、あくまでグローバルを狙ったゲームプラットフォームである点です。Web3では国境が関係ないため、世界中の人に遊んでもらうことを考えています。
ゲーム内トークンとして利用するのは独自の暗号資産DEAPcoinです。DEAPcoinは基軸通貨として各ゲームをつないでいます。
関連記事:無料でNFTゲームが始められる!「PlayMiningとDEAPcoin」に注目すべき理由3選 特に「日本の取引所への送金、日本円への換金」は圧倒的な強み
−DEAPcoinの特徴を詳しく教えてください
DEAPcoinは「エンターテインメントの熱量を可視化するために存在しているトークン」であると、最近改めて定義付けています。
web3という言葉がこれだけ取り沙汰されるようになったこともあり、「暗号資産って何のために存在するんだっけ?」という議論は今後さらに掘り下げられていくはずです。
その中で私たちは、「世の中に存在する価値=お金で測れるものとは限らない」という前提に立っています。
確実にこの世の中に存在しているんだけど、定量的に取り出して見ることが難しかった価値。
そういう価値を見える化し、定量的に取り扱えるようにする。そのために暗号資産は存在していると考えています。
ではDEAPcoinの存在意義はどこにあるのか、それは「エンタメの熱量」を可視化する点にあります。
クリエイターへのリスペクトやモノづくりの楽しさといった目に見えない価値を可視化するトークンにし、これを軸に経済圏を作っていきます。
単にゲームで遊んで稼ぐ仕組みだけではなく、この経済圏に入っていただくことで「お金で測れるものだけじゃないんだよ」というメッセージを伝えると共に、エンターテインメントの価値を世界に認めてもらえるような枠組みにしていきたいと考えています。
関連記事:Play to Earnのコインが日本初上場 「DEAPcoin(DEP)」とPlayMiningで遊べるNFTゲームを解説
web3の技術でクリエイターに還元できるシステムを
出典:DEA公式Webサイト
−山田さんは特に「クリエイターに還元する」ことに重きを置かれていますが、その点について詳しくお聞かせください
テレビ東京時代、私もテレビマンというクリエイターの端くれとしてモノづくりに取り組んできました。
その中で、今の世の中の仕組みはモノづくりに対するライフハックのようなものがあまりにも効きすぎていると感じたんです。
例えば音楽を例に考えると、作詞や作曲をした人の権利は圧倒的に保護されるのに、歌った人や編曲した人の権利は極端に守られていないとか、あるいはダンサーや振り付け師の人たちの権利も全然守られていないといった現状があります。
すべてのクリエーションについて言えることですが、何かを作るときは貢献する人が必ず複数いて、みんなで1つの結果を出しています。
でも、その結果に対して「いい思いができる」のは一部の人だけなんです。
その理由は実は単純で、「そういうものだから」。
さらに言うと、「各人の貢献度を測って正しく還元することは、頑張ればできるかもしれないけど、その仕組みをつくるのは面倒くさい」というだけなんです。
私はこれを「システム側のエラー」だとずっと思っていました。
こういう状態が続くと、みんながライフハックばかりする世の中になるんですよね。
その結果、日本のクリエイターはどんどん層が薄くなり、一方でしっかり給料を出せる中国のクリエイターの質が上がっていったりします。
これは詰まるところ、ユーザーが受け取るコンテンツ自体の質が下がっていくことを意味します。
エンターテインメントは人類の幸福度を上げることができるコンテンツです。
その量と質を高めるには、まず必要なのがクリエイターの置かれている環境の整備。
一気に100点満点のシステムは作れなくても、今まで出来なかったことを1つずつでもいいからブロックチェーンやNFTを利用して作っていけば、クリエーションの世界の温度感や人材市場の形も変わります。
−クリエイターへの還元は、具体的にどのような形で行うことをイメージしていますか?
特に私たちが取り組んでいるのは、ゲームアイテムとして提供されたイラストに対するロイヤリティの還元です。
これはサービスをローンチして以来行っていることです。
初期にイラストを制作してくれた方は、NFTのアイテムが1次、2次、3次……と販売・転売されるたびにロイヤリティが入り続けていることについて「今までこんなことはあり得なかった」と驚かれています。
これが実現できるのは、ブロックチェーンという技術あってのことです。
ブロックチェーンの思想を重んじる原理主義の人からすれば、「分散こそが正義」であり、プライベートチェーンで構築している今の私たちのやり方は本質的ではないという風に映っているかもしれません。
もちろんその点は私たちも理解していますが、すべてを一足飛びで進めることはできないというのも実情です。
まずはプライベートチェーンでいいから、今はクリエイターやIPホルダーに対する信頼をしっかりと構築しています。
そして、パブリックチェーンでもいけるなというタイミングが来たら、そこでクリエイターもIPホルダーも一緒に揃って外へ出ていきたいと思っています。
私たちはweb3の水先案内人なんですよ。
「web2からweb3に出ていって勝てる人は、自由に戦って勝てばいいじゃん」というのは、私たちがやるべきことではありません。
それはテクノロジーと思想ありきの側の人間がやることであって、私たちはあくまで「エンタメを作る側」です。
ですので、ユーザーとクリエイターのみなさんを、責任を持ってweb3の良い面に導いていく必要があります。
関連記事:NFTでクリエイターは中間搾取から解放される 「二次流通」で永続的に転売手数料が入る仕組みを解説
web3ゲームは人々の幸福度を高め、生きがいを最大化する
出典:PRTIMES
−先ほど「幸福度」とおっしゃいましたが、具体的にはどのような要素を指しますか?
まずは少し前提をお話ししますが、エンターテインメントの本質は「幸福度を上げること」だと考えています。
インフラでもなく、衣食住に直結する要素でもない部分、それこそがエンターテインメントが担っている領域です。
本質的には人類の生存に必要不可欠ではない部分について、何かを生み出していく。
それをエンターテインメントの仕事とするなら、行き着くところは「各人の幸福度を上げること」と定義するのが正しいだろうと考えます。
では、エンターテインメントでどのように幸福度が上がるのか。
人々それぞれの価値観にもよりますが、ここでは日本に古くからある「生きがい」という概念を表現したベン図で考えてみます。
以下の図はブロガーのマークウィン氏が「生きがい」を表現したベン図を、私なりに日本語に訳したものです。
出典:「メタバースとは何か?」答えを見つけたよ─GameFi“究極の価値”とは
一言でいうと、
- 好きなこと
- 得意なこと
- 社会的に認められること
- お金が稼げること
この4要素を表す円が重なる部分が生きがいであり、それがすなわち幸福なのではないかということです。
幸せという客観的な定義が難しい概念を、この「生きがいベン図」でもってある程度は論理的に示すことができていると思います。
そして、このベン図に基づいて考えると「4つの円が重なっている面積が大きければ幸せだ」と言えるでしょう。
そう考えると、昔の日本の士農工商やインドのカーストなど、仕事というものが生まれつき決まっていて、自分が好きな事と仕事がまったく結びつかなかった時代に比べれば、今は良い時代になったんだろうなと思います。
自分の好きなことをして、社会から認められて、収入も得られる。
つまり、円の重なる部分は増えたわけです。
ところが、なぜこの図がここで止まっているのかというと、現実世界ではこれ以上交わることができないからなんです。
もっと円の重なりを大きくしようにも、これ以上は物理的な制約があまりにも大きい。
たとえば、すごく入りたいコミュニティや会社があったとしても、それが地球の裏側にあったら、そう簡単には入れないよねということです。
関連記事:【インタビュー】ガラケー&小遣い6,000円からNFTの世界へ NFTは「前向きでチャレンジを応援してくれるやさしい仲間、新しい自分と出逢うためのチケット」
−物理的制約など今のままでは幸福度の向上に限界がある中、その解決策としてのweb3ゲームの位置付けはどのようにお考えですか?
シンプルに「遠くて行けない」のが原因であれば、それはGameFiやメタバースによって解決できます。
さらにアバターの利用にまで話が及ぶと、見た目の美醜や性差も関係なくなります。
「一緒に働いているあの人って男性だっけ、女性だっけ?」ということが、今もすでに起こっています。
かつてはこれ以上交わることができなかったこのベン図の円が、web3というデジタルの世界で物理的制約を取り除くことで、円はより重なり、生きがいは最大化されることになります。
そして、web3ゲームはまさにここに切り込んでいくことができます。
メタバースやweb3ゲームがより「イケてる」ものになれば、
- 好きなことに没頭して
- 自分の得意なことをして
- 他者を幸せにして感謝されつつ
- 経済的な利益も得る
そしてこれが持続可能なものとして続いていくという状態が実現できます。
これは、ワーク・ライフ・バランスという概念を無意味なものにする考え方でもあります。
ワーク・ライフ・バランスと言えば聞こえはいいですが、これはあくまで「ライフ」にアクセントがありますよね?
人生を充実させて幸せに生きる部分はライフ、そしてワークはあくまでワーク。
だから双方のバランスを取り、「ワークの量をコントロールしましょう」というのがワーク・ライフ・バランスという考え方ですよね。
では、ワークの時間はこの人生において無駄な時間なのでしょうか?
「お金を稼ぐために、無駄な時間だけどやらざるを得ないんだ」と考えるなら、そのような考えに基づくワーク・ライフ・バランスよりも、自分の好きなこと、かつ得意なことで給料をもらい、しかも社会的にも認められる方がよほどいいですよね。
Play to Earnのゲームはその初歩の初歩だと考えることができます。
最近、私たちがローンチした「Graffiti Racer(グラフィティ レーサー)」という「塗り絵×レース」のゲームがありますが、これは本当に良いサンプルになっています。
たとえば、塗り絵が好きな人はレースゲームをほぼやらずに、ひたすら塗り絵をしているという状況が出始めています。
塗り絵をした作品はマーケットで売ることができ、塗り絵が面倒な人がそれを買っていきます。
これはまさに「自分が好きなこと、得意なこと、人に評価されること、お金になること」が実現しています。
今はまだゲームだけで暮らしていけるほどの金額が稼げるわけではありませんが、今後出てくるweb3ゲームは、より高度にこの4つの要素を実現することで人類の幸福度の向上に貢献できると考えています。
関連記事:ブロックチェーンゲームで福祉業界に革命が起きた! NFTがもたらしたのは障害者支援の「新たな選択肢」
P2Eで人は自分自身の「新たな好き」を発見できる
−他にもGameFiが持つ効果や意味合いがあれば教えてください
GameFiを通じて、これまでゲームをやってこなかった人たちがゲームに触れて自分を再発見することは大事な要素だと考えています。
自分という人間が「何ができて、何が得意で、何が好きか」というのは、その事柄に出会ってみないとわからないですよね?
だからこそ私たちは、多様な角度からゲームを作っています。
新しいゲームとの出会いによって、ユーザーは自分の生活を豊かにする、自分の知らなかった扉が開く。
エンタメと出会う意味はそういうところにあると思います。
web2のエンタメマーケットは情報を集約して効率化しすぎたあまり、「あなたの好きなものはこれですね」という形で好みを押し付けられる形になってしまっています。
ですが、体験価値やコンテンツとの出会いは「偶発的に出会う」ことに価値があるんです。
この「偶然の出会い」を生み出すにあたっては、P2Eのゲームは力を発揮します。
「ゲームは好きじゃないけど、お金が稼げるならやるよ」という形で、ゲームプレイヤーの裾野は広がっていきます。
最初は稼ぐことが目的でも、そのコンテンツが優れたものであれば、プレイすることによってその人の人生は豊かになるはずです。
P2Eのゲームが生まれることで、人々が多様なコンテンツに触れる世界がやってきます。
元々はあまり興味がなかったコンテンツにも触れることで、「時代劇は好きじゃないと思っていたけど、見てみたら意外によかった!」というような効果をP2Eは生み出すことができます。
このように「新しい好き」を見つけるために、「偶然〇〇に出会う」というチャンス自体を、P2Eはサステナブルに作り出すことができます。
私たちがリリースしているゲームはまだ4つですが、その中でさえもこういったケースは生まれています。
「アクションゲームはダメなんだよね」と言ってカードゲームの「JobTribes」をやっていた人が、アクションゲームである「Cookin’ Burger(クッキンバーガー)」をやってみたら意外にハマったというようなことはよくあります。
関連記事:GameFi?Play to Earnってなに? 〜ゲームでお金を稼ぐ時代の到来〜
−自分が新しいゲームを好きになると、他者とのコミュニケーションも増えそうですね
家族の中でもそれは起こりますね。
一緒にプレイしたり分業したり、塗り絵レースのゲームなんかだと親が子供に対して「塗り絵しといてね」とか(笑)
人と人をつなぐのはゲームの本質的要素ですが、P2Eのゲームではより積極的に人がつながります。
なんといってもこれは「仕事・分業」なわけですから。
ご家族でプレイしている方だと、アセットの貸し借りが発生したり、夫婦間でスカラー関係(ゲームに必要なアイテムの貸借と共に雇用関係を結ぶこと)になったりなど、明らかに会話の質が変わります。
「このゲームを通じて俺とお前は雇用関係にあるから、ちゃんとやってくれないと困るよ」という会話だったり、「あそこのクリアの仕方ってどうするんだっけ?」といったやりとりが、まずは家族や友だちの間で起きてきます。
そこから広がって、縁もゆかりもない人と結ぶオーナーとスカラーの関係も生まれます。
人が雇用関係でつながるのって、実はすごく強い縁を結ぶことになるんですよね。これこそがP2Eやスカラー制度の本質なのではないかと思います。
お金を稼げること以上に、お金を通じて人と人が深い形で縁を結んでいくことがP2Eゲームの面白いところですね。
誰かの役に立つ体験を「サービス化」したい
出典:PlayMining公式Webサイト よりCookin’Burger!
−コミュニケーションの密度が濃くなると、人の役に立っている実感も得られそうですね
お金持ちになり、だいたいの欲求は満たされて、さあこれから何をしようかという時に人間が行き着くのが「人に感謝されたいな」とか、「名前は残らなくていいから世の中に対して何か貢献したいな」という心境です。
実際、私たちの事業で関わった出資家の方はみなさんそういったフェーズに至っている人が多いですね。
「大事なのはお金じゃない、それよりも楽しいことがしたい」と。
彼らが言う楽しいことというのは、世界がこれで変わるかもしれないというワクワクが感じられるもの、自分がこの地球というワールドにおいてこういう役割を果たせているんだという事実です。
これは非常にわかりやすい快感になります。
そしてP2Eゲームは、ゲームという形でいつでもどこでもその快感を好きなだけ味わえるので、エンタメとしてかなり優秀だと思っています。
何か世界の役に立ちたいと思っても、そのような仕組みはサービス化されていないのでなかなか体験することができません。
「だったら寄付でもする?」という発想もありますが、寄付をしてもリアクションは目見える形では得られにくいです。
「オレ、世界救ってるぜ!」という気持ちになれる仕組みがないんです。
それならば、電車で席を譲ったり、道端で重い荷物を持っているおばあちゃんを助けたりする方がよっぽど気持ちがいい。
ですが、それもオンデマンドじゃありません。
「今ちょっと席譲りたいな、今ちょっとおばあちゃん助けたいな」って無理ですよね(笑)
ですが、そういった欲求は人々の中に偽らざる形で存在しています。
実際にそういうことをしたら、その日1日気分がいいですよね。
そんな風に「幸福度を上げる」のは、まさにエンターテインメント体験だと思っています。
そして、それを誰にでも手をとってもらい、オンデマンドでそういう効果が得られるように設計をしているのがP2Eゲーム、特にスカラー制度が持つ体験価値であると考えています。
−P2Eゲームが担う役割が見えてきた気がします。一方、P2Eゲームに対する厳しい声もあるようですが……
よく言われるのは、「そのゲーム、面白いんですか?」という意見です。
先ほど述べた「おばあちゃんを助けることのような面白さ」を伝えてもなかなか理解はしてもらえません。
この点については、エンターテインメントの本質を考える必要があります。
囲碁や将棋、あるいはポーカーでも何でもいいですが、これらの面白さはルールや仕組みによって生み出された面白さであって、アセットそのものに面白さがあるわけではないですよね。
つまり、「この碁石自体が何か面白いですか?このトランプのカード、面白いですか?」ということなんです。
そうではなく、それを取り巻く周辺の関係性や仕組みが重要なんです。
囲碁や将棋ならば、プロの仕組みがあり、その中に階層があり、段位がある。
だからこそ、ありとあらゆるレイヤーで囲碁・将棋というエンターテインメントが楽しめる、それが囲碁や将棋の面白さですよね?
これと同じでゲームも本来的には「アセット+関係性」の総体として面白さが論じられるべきなんです。
ところがゲームは不思議と、「ゲームそのもの(=アセット)は面白いんですか?」という風に聞かれるんですよ。
私がゲーム屋さんではないからこそ敢えて言いたいのが、ゲームもワンオブゼムに過ぎないんです。
エンタメ全体の面白さにおける重要なピースではあるけど、あくまでパーツの一つにすぎない。
そう考えると、既存のゲームとweb3のゲームというのはそもそも仕組みがまったく違うわけですよね。
これまでのゲームにはスカラー制度もないし、お金を稼ぐ体験もできない。
なのに、「ゲームそのものは面白いんですか?」と聞かれるのは、「この碁石とこの碁石、どっちが面白いですか?」と問いかけるのと同じ感覚で論じられている気がするんです。
私たちのゲームは「どこにでもあるじゃん」というものしか出していません。
ですが、それらが提供する面白さは、web3におけるNFTとトークン経済圏とスカラー制度、あるいは社会貢献性のようなものまで全て含めたパッケージだと考えた時、これまでのゲームとはまったく違うエンターテイメントに既になっています。
−web2までのゲームと、web3のゲームの対比がよくわかった気がします
ここで議論を終わらせると「web2対web3」のようにも聞こえるし、「既存のゲーム対web3ゲーム」にようにも聞こえると思いますが、そうではありません。
例えるなら、映画とテレビのような関係性です。
どちらも画面上で展開する動画というアセットですが、喧嘩をすることなくお互いを尊重しています。
マネタイズスキームも違います。
映画はエンドユーザーに直接お金を支払ってもらうのに対し、テレビは広告中心の経済圏で成立しています。
私がこの2者の関係性を気に入っているのは、「web2のゲームは映画、web3のゲームはテレビ」というように置き換えることができるからです。
web2ゲームのエンドユーザーたちは、これからもお金を払ってゲームをプレイします。
一方、web3ゲームでは必ずしもエンドユーザーがお金を払う必要はありません。
さらに言えば、ユーザーがゲームを通じて儲けてもらっても構わないわけです。
「web3ゲームはそれで成立するの?」という意見もありますが、これは成立します。
映画とテレビ、どちらの経済圏の方が大きいと思いますか?
実はテレビの方が100倍くらい大きいんですよ、エンドユーザーからお金はもらっていないのに、です。
−対立構造でないとするならば、web2ゲームとweb3ゲームは今後どのような関係を築いていくとお考えでしょうか
全人類を「ゲームをする人、しない人」に分けると、「する人:30億人、しない人:50億人」に分かれるというデータがあります。
であれば、私たちは目指すべきは、web3ゲームを通じて50億人の中のいくらかの人たちにゲームというものに触れてもらい、そのうちさらにいくらかの人たちが源流のweb2ゲームに戻っていく流れを作ることです。
つまりweb2、web3が一体となってマーケットを大きくしていき、コンテンツも豊かにしていくことが私たちのやろうとしていることであり、決して既存のゲームユーザーのみなさんを怒らせたり、喧嘩をしたりするわけではありません。
web2のゲームはもちろんこれからもずっと続きます。
滅ぶこともないですし、ずっと伸びていくと思います。
一方、私たちはアプローチの仕方を変え、違うところにいる人たちに、違う体験価値でもってマーケットを広げていくというだけの話です。
web2ゲームは温度高くずっとこの産業を回しておいてもらって、その間に私たちは逆に外に出て新規ユーザーを獲得してくるという役割分担だと思っています。
関連記事:DEA社の「DEPバイバック」ってなに? その具体的内容と効果、実際に行われているかを追跡していきます。初回は1億円以上と驚愕の金額だった。
もう一度「ポケモン」を生み出す
出典:PRTIMES
−最近、DEA社はテレビ東京と業務提携、楽天と協業推進に向けた覚書を締結されました。これも踏まえてPlayMiningは今後、どのような世界を実現しようとしているのでしょうか?
テレビ東京さんと楽天さん、ともにやるべきことは少し異なりますが、大きくはマス層に訴求をしていくこと、そして地に足をつけたweb3化を進めることです。
ゲーム自体を彼らと共同開発することは、短いスパンでは特にありません。
まずはユーザーのリテラシーを上げ、お互いのビジネスに対しては相互創客をしていくと言ったところからスタートします。
ですが、5年後くらいを考えると、これは必ずやると言えるのは「web3のアプローチを通じた新しいコンテンツIPの創出」です。
テレビ東京さんで考えると、ポケットモンスターが非常にわかりやすいゲーム由来のコンテンツIPですよね。
彼らはそこに対する成功体験があり、「いかにポケモンがテレ東の柱としてここまで来たか」は誰もが知っているところです。
こういったものを0→1でもう一度作るのが、5年スパンで考えたときの大きなテーマですね。
これについては制作委員会のようなものができ、いわゆる「大人たち」が集まって作っていく部分は大きいのですが、これからはクリエイターの存在、そして生きがいを感じられるようなコミュニティ、つまりDAO的な要素があるものが必要です。
DAOはいきなりポンと作ってもうまくいかないとも言われますが、私たちはあくまでDEA社とテレ東と楽天で、まずは中央集権的に音頭をとった形で進め、その後に参加がしやすい形のDAO的なものが出来てくるイメージを持っています。
そこからまだ見ぬコンテンツIP、新しいIPが生まれれば、テレ東と楽天と組んでいるわけですから、360度あらゆる方面でいわゆるweb2的な展開を繰り広げることもあります。
イベント、音楽、漫画、アニメなどの選択肢もあるでしょう。
そこは必ずしもweb3的な運営でやる必要はないと思っています。
そして、360度に展開をする中で、ゲームが出てくればそれはPlayMining上でP2Eゲームにすれば良いわけです。
やはりテレビ東京さんと組むというところから、「既存の大型IPがゲーム化するのでは?」と期待いただく方も多いと思うのですが、それも無いとは言いませんが本筋ではありません。
それよりも、テレビ東京さんも私たちと組んで、「もう一度、ポケモンを生み出したい!」と思っています。
ポケモン自体も、白黒のゲームボーイで生まれたあのゲームをマルチメディア展開することで、世界に冠たる超巨大IPとして成立したわけですよね。
だから、再びゲーム由来でもいいし、何かIPの種となるものをうまくこのweb3という新しい孵化装置の中で育てたら、すごく面白いことが起こせるんじゃないかと思っています。
それに対して私たちは私たちなりのノウハウがありますし、テレビ東京さん、楽天さんもそれぞれノウハウがあります。
それをクリエイター、そしてコミュニティとうまく合わせることで新しいIPを作っていきたいと思います。
大人の理屈ではなく、クリエーションのエネルギーを最大効率で出していくために、web3という器を使ってブーストさせていきたいですね。
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