NFTに取り組んでいる人にさまざまな角度からNFTの魅力をお伺いする本企画。
今回は、日本を代表するジェネラティブNFT(※)コレクションの1つ、NeoTokyoPunks(以下NTP)のファウンダーである NIKO24さんにお話しを伺いました。
※コンピューターによって自動生成されたNFTアート
日本国内でのジェネラティブNFTの盛り上がりに火が点く前の2022年3月にNTPは誕生しました。
Discordコミュニティの人数も6,000人を超え、現在ではNFTの枠を飛び越えて多方面でのIP事業展開に力を入れています。
いまや人気NFTコレクションとなったNTPですが、運営チームの創設当初はNFTプロジェクトのチームづくりの前例がなく、日々手探りの状態で活動していたことは知らない方も多いのではないでしょうか。
今回、NIKO24さんにはNTPの運営チームづくりや、その経験から得たものを生かした今後の展開などについてお話しを伺いました。
ぜひ最後までお読みください!
個人クリエイターの活動から、IP活用によるweb3エンタメの創作へ
−現在の活動内容について、NeoTokyoPunks自体を知っている方は多いと思いますので、直近の動きなどを中心にお伺いできればと思います。
NeoTokyoPunksは、もともと私自身がクリエイターとしてNFTで食っていくというところからスタートしたプロジェクトです。
そして現在は、より大規模に運営していくフェーズへの移り変わりの真っ只中というところですね。
最近思い描いているのは、IP(キャラクターなどの知的財産)として新しい形のエンタメ、いわばweb3エンタメを作っていくことです。
NFTとしてはPFP(SNSなどのプロフィール画像)という用途に限定せず、ファッションブランドづくりを絡めた動きなどに発展させて、NFT以外の部分でも収益化のベースを作っていこうとしています。
そのためにはIPとしての魅力もさらに深めていく必要があり、認知も高めていく必要があります。
いきなりNTPがファッションブランドをやりますと言ってもさすがに唐突過ぎますからね。
私はストリートファッションのような系統のファッションが好きなので、音楽アーティストの方とコラボして親和性があることを見てもらったり、あるいはNFT以外の領域での活動を増やしたりして、そこでファンが増えれば再度デジタルの方も拡充していきたいと考えています。
−国内プロジェクトではCryptoNinja Partners(CNP)などは本格的な事業であると言えます。一方、おにぎりまんさんのような個人クリエイターの方も物販などで収益化していますが、現在のNTPはどちらかというとCNPのように事業寄りのフェーズまで来ているということでしょうか。
すでに自分で会社を立ち上げて、会社の事業としてやっています。その意味ではCNP寄りですね。
私も最初は1人のクリエイターとしてスタートしましたが、今はより大きな事業になっています。
ファッションブランドづくりも実はすでに動いていて、現在セカンドコレクションとして制作しているNFTのキャラクターが着ている服をファッションブランドにしようとしています。
まずはNFTのイラストとしてファッションを表現し、そこからリアルなファッションブランドとして展開するためのチームもすでに出来ています。
ブランド名やブランドコンセプトもNTPという名前ではありません。セカンドコレクションのNFTの世界観の中でキャラクターが着ているものをファッションブランドとして作り、それをさらにNFTと組み合わせて展開していけたらなと考えています。
関連記事:「NEO TOKYO PUNKS」が爆発的に伸びた2つの秘訣 今までの国産NFTと何が違うのか
実は先日まで会社員やってました
出典:OpenSea
−そもそもNIKO24さん自身がNFTを始めたきっかけについてお伺いします。
仮想通貨は2017年頃から触っていて、CryptoPunksが出てきた時もその動きはリアルタイムで見ていました。
自分でNFTをやろうと思ったきっかけは、昨年(2021年)にDeFi(分散型金融)のTITANという銘柄の大暴落で大損を出してしまったことですね……。
奥さんに叱られて、「どうにか取り返してよ」と言われまして。
そこで最初は自分の特技を生かしてLINEスタンプを作ったり、ブログを書いたりしたんですが、やはりそれだけだとなかなか取り返せないなと。
ちょうどその頃、個人として作品を作っているNFTクリエイターの活躍を目にしたんですよね。「書」をNFTにして作品を作っている一夜さんなど、いろんな方の作品が流行っていました。
それを見て、自分もイラストは好きだし、これで収益化できるんじゃないかなと思って作品を描き始めました。
−NTPを作り始めたころはすでに専業として活動していたのですか?
いえ、実は正式に会社を辞めたのは本当に最近で。今年(2022年)の11月です。最終出勤は9月末あたりで、それから有給休暇を消化していました。
ですので、1年くらいは会社員をやりながら制作をしていたことになりますね。
NTPをリリースした後に、「会社勤めをしながらこの活動を続けるのは無理だな」と思い始めて、NTPリリースの1ヶ月後くらいに1度会社を辞めるという話をしました。
ですが子供も2人いるので、その時は妻も会社を辞めることに不安に感じ、一度話は流れました。
とはいえ、人生でこんなチャンスが来ることは二度とないなと思い、いろいろ話し合った結果、NFTの活動にかけてみることにしたんです。
今のNFT市場は2次流通も起きにくく、収入の面では厳しいものはありますが、それでもなんとかなるだろうなと(笑)
いま積み上げている経験が生かされて次の道にもつながると思いますし、会社員時代の転勤族だった時に比べれば精神状態も安定しています。地元福岡に帰って活動している今の環境は、家族にとってもよい選択だったと感じています。
未体験、そして正解がない「NFTコミュニティづくり」
出典:NTP 公式サイト
−最近まで会社勤めをされていたのは驚きです!そうすると、いち会社員という立場からいきなりNFTプロジェクトのファウンダーに転身されたわけですが、その点で何か苦労はありましたか?
そもそも「会社組織じゃない」というのがNFTプロジェクトの難しいところですよね。
NTPにフルタイムでコミットしているのって自分だけなんですよ。
コアメンバをみても、それぞれ本業を持っていて、NTPにはいわば副業的にコミットしています。
とにかく前例がない状態でスタートしているので、どういう風にコミュニティを作っていくのか、どういう役職が必要なのか、まったくわかりませんでした。
自分自身、最初は副業的というか趣味の延長のようなところから始めたのに、突然「組織」という話になったので、そのギャップは大きかったですね。
しかも、その組織のイメージさえ持たずにスタートしていますから。
ですので、「会社ではないんだけど、でも逆に会社の組織構造に当てはめて考えると、こういう役職が必要なんじゃないか?」というように考えて組織づくりをしていきましたね。
どういう役割分担にすればいいのか、権限はどう与えればいいのか、そういうことは会社ではすでに出来上がっているものですけど、NFTプロジェクトにはそれがありませんから。
誰もイメージがない状態だったので、みんなで話し合いながら「こういう役職が必要なんじゃないか、このポジションにこういう権限を与えたらどうか、決め事をする時は誰がどうやって決めるのか」というルール決めをしましたが、これが苦労しました。
あとは報酬設計も苦労しました。重要なお金の話なのに、誰も正解を知らないわけですからね(笑)
−そのような重要事項の決定を、ご自身は会社に勤めながらやっていたということですか!?
だいぶみんなに助けてもらいながらやりましたね。でも、うまくいかないことも多かったですよ。
意志決定をする際も、まずはみんなで話し合おうと言って会議の場を設け、週1で話し合うということをやっていたんですが、なかなか決まらないし、そもそもみんな考え方も違うので、決まったことに対して不満が出たりもしました。
今は結局、ファウンダーの自分がある程度の施策を決め、「こういうことをやりたいです」と伝え、賛同してくれる人はこの企画に参加してくださいという形になっています。
とはいえ、ファウンダーだからといって権限を振りかざすようなことはしたくなかったんですよね。
できればいろんな意見を聞いて決めたいという気持ちはあり、DAOっぽいやり方を模索したんですが、やはり難しかったです。
でも若干その要素は残していて、例えばコラボレーション依頼が来たときの判断などは投票にしたりしています。もちろん自分も、他のメンバーと同じ1票を持って参加します。
コレクションの方向性や重要なコラボは私が意志決定をしますが、それ以外の頻繁に来るような小さめの依頼、例えばギブアウェイ(無料配布)をやってほしいとか、作品のパーツを使いたいというようなコラボ案件は投票制で決定しています。
−NIKO24さんが重要事項を決定して、賛同する人が参加したければ参加するというのは良いですね。ちなみに報酬は初期から払っていたのでしょうか?
プロジェクトをスタートした頃のメンバーにはお金ではなくNFTを渡しました。NTP自体を何枚お渡ししますという感じですね。
ただ、それだけだと成り立たなくなってきているなとは思っています。
今もそのやり方でいいという人もいる一方で、現金でほしいという人もいますからね。
この点、それぞれ求めるところが違うのは事実です。金銭的な部分を求めている人もいれば、経験を積みたいという人もいます。
いま準備しているセカンドコレクションに関わっている人は、現金のお支払いかNFTの譲渡、どちらも準備しています。
副業でコミットしてくれている人の中には現金をもらうと困るという方もいるので、そういった場合はNFTをお渡しするなど柔軟にやっています。
関連記事:「NEO TOKYO PUNKS」は日本発で世界に誇れるNFTコレクション その世界観と価格の推移
高い「個の能力」に役割を後付け
−コミュニティを作っていく中で、主要なメンバーの方がどんな風に活躍しているのかお伺いします。
つい最近、組織を少し変えて、その結果コアで活動している人数は増えました。
コミュニティマネージャー、Discordマネージャー、モデレーター、マーケター、コンテンツプランナー、ビズデブ(ビジネスディベロップメント)など、兼任の方もいますが総勢9名のメンバーが主として活動しています。
大所帯になってきましたが、最初からこういった役職が必要だと思って組織づくりをしたわけではありません。
最初にコミュニティマネージャーを務めてくださったのがTOMOさんという方なのですが、コミュニティが大きくなるにつれてTOMOさん1名では次第に手が回らなくなってきて。
そんな中、コミュニティに新たに入ってきた人に対して、自発的に案内をしてくれていた人がいたので、こちらからそういった方に「モデレーターやりませんか?」という感じで声をかけて徐々に組織をつくってきました。
コンテンツプランナーも最初はありませんでしたが、web3放送作家のSHOWGOさんがたまたまチームに入りたいですとおっしゃってくださって。
企画やイベントがあればその企画書を作ったり、エンタメとしてこんなコンテンツを作ったら盛り上がりますよというような提案ならできますと言ってくださったので、「それならコンテンツプランナーとして入ってください!」といった流れでどんどん人が増えていきました。
みなさんが個々の能力を発揮して「こんなことができる!」ということからメンバーに入ってもらい、後付けでどんどん役割・役職ができた感じですね。
−主要メンバーのみなさんが仲間になってくれた経緯はわかりましたが、そもそもの出会いのきっかけはどのような形だったのでしょうか?これだけのメンバー、そうそう身近にいないと思うのですが。
最初に加わってくれたTOMOさんは、NTPを買ってホルダーになってくださったところからのスタートですね。
「NFT買いました!」というDMが来て、その時に、お手伝いできることがあればと言ってきてくれたんです。
その他の方は、基本的にDiscordですね。
タイミングとしてはNTPリリースの宣伝を始めた頃です。
TwitterでNTPに関する発信を見て興味を持ち、Discordに入ってくれた人が結構多くて。
その中で活発に発言されていた方にこちらから声をかけたり、向こうから声をかけてくれたりという形がみなさんとの最初の接点ですね。
web3に興味があり、常にアンテナを張っていたような方たちが、何か自分も関われることはないかと思ってNTPのコミュニティにたくさん来てくれました。
−コミュニティの成長段階に応じて必要な人材やスキルの種類も変わってくると思いますが、そのあたりはどのようにコントロールしたのでしょうか?
最近、組織の形を変えましたが、その時は「いまコミュニティに必要な能力を持った人」を募りましたね。
例えば、セカンドコレクションのリリースにあたりマーケティングが必要だから、マーケターとして動いてくれる人いませんかとか、あるいはNFT以外で収益化していくためにビズデブに強い方や企業とつなげるのが得意な方はいませんかということを発信してメンバーを募りました。
また、規模が大きくなってきたことで組織の形も変えました。
スタートした頃は人も少なかったので、1つの役割に対して担当1人という感じでしたが、今はチームを作り、その中で指揮を執るのはこの人という形にしています。
以前はやみくもに「出れる人はみんな会議に出てください」みたいなこともあったんですが、それだとみんなカツカツになるので、役割をちゃんと決めました。
今は、例えばマーケティングについてはマーケティングのチームだけで成立させるようにしています。会議の参加者もそのチームの人たちだけという形で、チームごとに明確に役割を持つようにしました。
この点、意外と普通の会社っぽいなという部分もありますが、今はそういった形の方が意志決定も円滑に進む部分があるというのは正直なところです。
関連記事:「NeoTokyoPunks」運営メンバー:コミュニティ構築のプロ、TOMOさん 新しいNFT運営チームとその可能性
チームづくりの軸となったのはNTPだった
出典:OpenSea
−これをファウンダーに聞くのはおかしいかもしれませんが、メンバーのみなさんはなぜ自分がコミットする場としてNTPを選んだのでしょうか?アンテナを張って感度も高い人たちなので、自分でいろいろ探す力もあったと思います。その中で「NTPを選んで参画してくれている」のはなぜだと思いますか?
実はそのことをみんなに聞いたことがあるんですよ(笑)
「なんでNTPだったんですか?」って。
するとみなさん口を揃えて、イラストの雰囲気が好きだとか、イラスト自体に音楽的な要素が見え隠れしていて、それが自分の感性とマッチしているとか、自分の主義と合っているとかいったことを伝えてくれました。
それまでもいろいろなNFTコレクションを見てはきたんだけど、なんとなく決め手がなかった、とも言っていました。
どこかのコミュニティに関わっていこうとは思っているけど、決め手がない。
そんな時にNTPのイラストを見て「ここに関わりたい!」と感じて入ってきてくれた人が多いですね。
今後、いろんなNFTプロジェクトのキャラクターがアニメや映画になって動く姿を見る日が来るかもしれないけど、アニメを見るなら自分はぜひNTPのアニメを見たいんですよ!とも言ってくれて。
NFTをベースに、世界に対してコンテンツを売り出していくなら自分はNTPを推したい、とみなさん言ってくれます。
NTPホルダーのみなさんは、自分がNTPの世界観の中に入り込み、このキャラクターのようになりたい、とまで思ってくださっている方も多い気がします。
PFPとして長い間設定している方もかなり多く、ゆえに自分が持っている作品に相当な愛着が湧いて、もはや「自分が持っているNTPのキャラクター=自分」みたいになっているからアイコンを変えられないんですという声もよく聞きます。
それどころか、コミュニティ内にはギルドというチーム制のような仕組みがあるんですが、みなさん不思議とそのギルドの仕組みに沿って行動するようになるんですよね。
このギルドとこのギルドは犬猿の仲、逆にこっちとあっちは親密とかいう設定を公式が作ると、その設定や思想に沿った動きをみんながとるようになるんです。
さらに、サイドストーリーを自分たちで作ってみたりとか、自分のキャラクターに名前をつけたりとか、こことここは付き合っているという設定を勝手に作ったりとか(笑)
そこまで入り込んで活動をされているので、NTPコミュニティの人であれば、アイコンを見ただけで誰々さんだということがほぼわかる状態になっていますね。
NTPが動く姿を見てみたい
−セカンドコレクションも含め、事業としてこれから目指していることについて教えてください。
NTPというNFTをベースにIPを成長させて、新しいエンタメにしていきたいと考えています。
「NFTから誕生したキャラクター」ではあるんですが、NFTの枠にとどまらずにマンガやアニメ、あるいはファッションへの派生など、PFPだけじゃなく様々な領域でIPとしてビジネスを展開していきます。
すでにキャラクターIPとしてゲームとのコラボも決まっていますし、ブロックチェーンゲームにIPとして使っていただくことなども決まっています。
そもそもこの業界は流れが速いので、1つのことに絞って取り組もうとしても、その方向性が違っていたりとか、すぐに方向転換しないといけないタイミングって割とあるんですよね。
だからこそ、1つのことにとらわれず「総合的にIPを育てる」という想いでいろんなフォーマットにチャレンジしていけたらと思っています。
それに加えて、クリエイターさんの支援ができたらいいなとも思います。
今後、まずは自分たち自身がNFTコレクションを運営するノウハウだとか、NFT×企業での事業の作り方、ビジネスのやり方を確立していけば、その知見を生かして自分と同じようなクリエイターさんやNFTコレクションをやりたいと思っている人を支援することもできるなと考えています。
今はNTPを育てるために会社をやっていますが、ゆくゆくは「NTPスタジオ」みたいな感じで、クリエイターさんやNTP以外のコレクションもサポートしていきたいです。きっかけがないとか、やり方がわからないというクリエイターはたくさんいると思うので、そのあたりの支援ができたらいいですね。
企業発のNFTコレクションは大きいものがたくさんありますが、クリエイター発でも成功したといえるコレクションを作っていきたいという気持ちがあるので、そこはまず自分が頑張って事例を作っていきたいなと思います。
−NTPというIPに着目するならば「ハリウッドで映画化!」とかも夢がありますよね。
NTPが動いている姿を見たいとか、ストーリーとして見てみたいという声はかなりあります。
IPを謳っている以上は、そこはやはり目指したいところですよね。アニメ、映画といった映像化は実現したいです。
そもそも、誰よりも私自身がNTPの動く姿を見たいなと思っています。
実際、そういう話も結構いただいているんです。
具体的な話はまだ進んでいませんが、「5分弱のショートムービーあたりで作ってみませんか?」という話もすでにいただいていたりするので、このあたりはやっていきたいですね。
なんといっても正解がわからない世界ですので、今後もいろんなフォーマットで可能性を探っていくつもりです。